真夏の夜の夢☆子どものためのシェイクスピア [Stage☆Review]
毎年楽しみにしている舞台です。今年は喜劇。
「子どものためのシェイクスピアカンパニー」の魅力炸裂でした!
アテネの森を舞台に 妖精たちと人間の2組の恋人 そして王様の婚礼を祝って劇中劇を演じる
職人たちが織り成す、物語。
妖精の王様の指図により いたずら好きの妖精パックが「ほれ薬」を まちがえて
他の男の瞼に落とすことから 取違いの喜劇がはじまります。
おまけに不仲の妖精の王妃にも ほれ薬がかけられ~と物語はとんでもない方向へ。
時事ネタをたくみに取り入れて (当時の舞台もきっとこうだったと思います)
笑いを存分にいれながら 巧みな俳優たちによる 舞台つくり。
芝居の終りに
「もし芝居がお気に召さないようだったら、すべて夢の中でおこったこと~」といったセリフがあります。
花火が終わってしまったような~夢が覚めてしまったような~ 寂しい気持ちが溢れてきます。
夏の夜にみるのに ピッタリのステージでした。
☆☆☆very good!
落語1周年☆古今亭志ん輔 [Stage☆Review]
ちょうど昨年 志ん輔のシェイクスピアの落語を聞いてから 落語にはまりました。
今年は「リチャード3世」をベースにした創作落語「針千本」と古典落語「宿屋の富」
双方とも堪能することができました。
志ん輔師匠の熱演が素晴らしい~!
「針千本」は性悪の男の子の出世物語、最後にはドンデン返しもあり、じわっと涙があふれる
逸品でした。原作のリチャード3世は どこへやら~ですが ご本人もこの話はよく知らないと
いう枕で一件落着。
「宿屋の富」は 富くじが題材になった 夢あふれるお話(?!)
古典の安心感と 富くじが果たして当たるのだろうか?というスリルで楽しめる作品でした。
落語と落語の間には東京ボーイズの漫談、楽器片手でのとぼけた味は寄席ならでは~。
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落語のあとは 赤坂のクラシックなケーキ屋「しろたえ」でお茶を
チーズケーキプラスアルファで ティータイムを楽しみました。
小さいながらも こってりとしたチーズケーキ
コリオレイナス&ひばり☆蜷川作品 [Stage☆Review]
2月の最初と最後に蜷川幸雄演出の2作品をみることができました。
「コリオレイナス」(於さいたま芸術劇場)
シェイクスピアの37作品のうちで 後期のローマ史劇。あまりおなじみではない作品を
どのように興味深く見せるかが 一つの楽しみ。
全面ガラス張りの舞台からはじまり、和のテイストをふんだんに使った舞台装置、衣装。
舞台を覆い尽くす大階段上での動きは ローマの広場を俯瞰でみている錯覚に陥る。
コリオレイナスはその高潔というより こだわりのようなもので自らの運命を踏み外してゆく。
時に民衆の言葉から始まる扇動から そしてたった一人の母親の言葉から~。
現代に置き換えるとマスコミに踊らされる自分たち、そして加熱気味のマザーコンプレックス。
遠いローマで起こったことではなく 鏡により 自分たちも引き込まれてゆく舞台作りであった。
「ひばり」(於シアターコクーン)
こちらは世界史でもおなじみのジャンヌダルクを描いたアヌイの作品。
俳優たちが衣装をつけたり、談笑しながら舞台に上がってゆく始まり方。
いつ始まるのだろうか?と思わせるところで イギリスの伯爵の一言で舞台はじまる。
オープニングで その劇や映画が面白そうか そうでないか 90%は分かる気がする。
蜷川演出の2作品とも 期待を抱かせる好きなタイプの始まり方であった。
松たかこの真髄のような舞台。声色の使い分けや よどみのない長大なセリフ。
言葉によって 周りの人々を引き込んでゆく様子がよく演じられていた。
衣装ともいえない シンプルないでたちで 髪もばっさり切り、ジャンヌになりきり、
この世で たった一人きりでけなげにも全世界を相手にしてゆく。
聴衆の一部として参加している自分たちは クライマックスに向かい、これが法廷の中で
「演じられていた」ことを忘れてしまう二重構造。 実在の人物が描かれているので興味は増す。
両作品とも星3つ。
フィナーレで鳥肌の立つ感動~観劇後 数日は あれこれ舞台にひきずられた。
スウィニートッド☆本当のリベンジ [Stage☆Review]
新春を飾るにふさわしいミュージカルをみてきました。
復讐したい人々を次々と殺して ミートパイにして食べる...。
現代の状況をオーバーラップさせると あまり見たくない内容かと思いますが
宮本亜門の演出により すばらしい舞台となっています。
難しいゾンドンハイムの曲にのせて 時に笑いもさそう すばらしいアンサンブル。
こんなに後味のよい復讐悲劇もめずらしい。
暗い内容だからこそ 料理のし甲斐があるのかもしれない。
市村×大竹 ほかキャスティングの妙味も楽しめます。
覚えなくてもよい名前「スウィニートッド」を完璧におぼえることになりますよ。
アンサンブルのよさを物語る ブログも楽しめます。
http://blog.e-get.jp/stodd/
評価は☆☆☆
LOOT薔薇と棺桶☆夏のホラー [Stage☆Review]
イギリスの作家ジョーオートンの作品の舞台を見にゆきました。
半日の間に同じ部屋の中で起こる出来事。
「棺桶」や「死体」が話の中心となれば 夏にぴったりのホラーなのか?
LOOTとは「戦利品」「略奪品」と言う意味。オスカーワイルド(「幸福の王子」や「わがままな大男」の作者)の再来といわれゲイでもあった ジョーオートンのブラックコメディ。
3日前に妻を亡くした薔薇好きなマクリーヴィ氏、
夫人の財産を狙っている夫人付きだった看護婦フェイ、
葬式の前日に銀行から強盗したマクリーヴィ氏の息子ハル、
フェイに夢中で、ハルの強盗に力を貸した葬儀屋デニス、
強盗事件を調査しに水道局員に変装した刑事トラスコット、
この5人が「金」をめぐっての欲望に動かされながら 舞台を出たりはいったり
キーワードになるようなセリフと動きがそこかしこに。
そして重要なのは 舞台の一員として 棺桶にいれられた「死体」。
入れ歯や義眼、、ミイラなどの仕掛けが グロテスクにはならずに 舞台で語られ
観客も しだいに「死体」の存在になれてゆく~。
結末は以外な方向へ。
アイロニーをふくめての 勧善懲悪とは ウラハラの終わり方。
何がホラーなのか、やはり生きている人間が怖いのだ、と思わせる舞台でした。
それぞれ特色のある場で活躍していた俳優たちによるアンサンブルで盛り上がってました。
(モト宝塚、男性だけの劇団、新劇~など)
落語上半期まとめ [Stage☆Review]
今年は落語!と思ったとおり 快調に足を運んでいます。
ここいらへんで 前半での まとめを~ (題名など忘れますので)
1.古今亭志ん輔 新作の「黒白粉」(ハムレット)と古典の「富久」
落語初体験~志ん輔の旨さに 落語にすっかりハマッてしまいました
2.兄弟らくご会
春風亭小朝 古典「試し酒」 お酒の飲みっぷりがすばらしい、兄貴分の貫禄充分
林屋 正蔵 古典「子別れ」 真打襲名後1年の高座 人情ものが得意か
林屋 一平 古典~題名忘れました、歴史上の人物でした。若さってすばらしい~。
3.桂 文珍 古典「手水廻し」「星野屋」 新作「老楽風呂」
はじめての上方落語 鳴り物いりの 机あり、の高座のオモシロさ。
文珍で 新作の面白さを知る、 可笑しくて涙がボロボロでましたもの。
4.林屋 正蔵 古典「一文笛」 芸を磨くのは時間がかかる事。観客も一端を担うわけですね。
桂 歌丸 古典「火焔太鼓」 笑点ばかりでなく この人の芸は素晴らしかった。
艶もあり 盛り上げ、演じ分けなど 存分に楽しめる高座でした。
高座の前には 弟子の落語や ほかの芸能が披露されます。
なかでも 面白かったのは 太神楽(だいかぐら)、 日本での最古の芸能とか。
染乃介、染太郎でおなじみの芸です。 若手の柳貴家小雪の芸はなかなかでした。
太神楽曲芸協会のHPより「五階茶碗」
柳貴家小雪HPより
こどものための「リチャード3世」☆東京グローブ座 [Stage☆Review]
毎夏恒例の「子供のためのシェイクスピア」を観て来ました。(昨年はこちら)
子どもと共に見始めて 通算12回目の観劇になります。
いつもながら 「子供のため」がゆえの質の高さと 内容の良さを楽しめる舞台でした。
「リチャード3世」というと 超ワルのリチャードがいかに王位を奪還して破滅してゆくかの
歴史劇ですが シェイクスピアの手にかかると ただの悪だけではなく 深い内面性、
心の闇まで描かれています。
今回はその深さをリチャードの左手の人形とのセリフの葛藤で表していました。
(シェイクスピア人形や内容など詳しくはtwomoonさんのブログで御覧ください)
イギリスの薔薇戦争の中、リチャードが2年2ヶ月君臨した約100年後に書かれた作品。
薔薇戦争とは賢王エドワード3世の4代あとの貴族たちが血族ながら王位を争う内紛で
その複雑な人物関係が解るように 殺しの場面が多し。
セリフの中で表すより ビジュアルでどのように歴史が動いたかを見ることができます。
(本来の舞台では見せるより リン♪がなり 人が死んでしまったということを表すことが多い)
この舞台はたった十人の役者によって演じられます。
主役をのぞいて 扮装を変えてのひとり2役は当り前。
ほかに黒装束で その他のセリフも多々あり おまけに舞台装置(椅子と机)を動かしての
シーンの転換もおこない、出番がないときには 楽屋にいる、なんて
考えれない脚本作りも一興。
久々の東京グローブ座での公演も嬉しいことでした。
来年も大いに期待すべし~☆☆☆
マクベスは落語ネタ?☆メタルマクベス [Stage☆Review]
「劇団☆新感線」と「クドカン」(宮藤官九郎)のコラボレーションによる「メタルマクベス」をみてきました。「マクベス」はシェイクスピアの中でも一番好きな作品。どんな風に料理されるのか?
「マクベス」の筋立てをくずすことなく(翻訳者の松岡和子氏のお墨付き) 笑いをちりばめ、
ヘビメタの生演奏でひっぱってゆくライブ会場のような舞台。
オープニングの笑い満載の魔女の出現から 200年後の世界(ESP王国)のシーンに一気に
場面転換。まるで映画のよう。
魔女たちの言葉に触発され 可愛くもキツ~イ夫人に叱咤激励されつつ 王になる野望をはたしてゆくマクベスのストーリー。
登場人物は ギターなどの楽器メーカーの名前がつけられた役者により歌と共に演じられる。
マクベスはランダムスター、バンクォーはエクスプローラ (冒頭にヤマハもでてくる!)
もうひとつのプロットとして 1980年代のヘビーメタルバンド「メタルマクベス」の栄枯盛衰が
描かれる。これは200年後のマクベスとおなじ俳優が演じる。ランダムスターはマクベス内野
エクスプローラはバンクォー橋本~。
後半は王位を手に入れたランダムスター(内野聖陽)とランダムスター夫人(松たか子)が狂気と共に一気に滅亡してゆく「悲劇」が 笑いがあるものの感動的に演じられる。同時にヘビメタバンドの話が見事に本筋に融合されて フィナーレを迎える。
話題の「クドカン」のアレンジの仕方は面白かった。そういえばマクベスの終わり方は
「落語」のオチに似たところがあると 再発見。
4時間の公演をあっという間にみせる「劇団☆新感線」の「いのうえひでのり」の
演出の冴えも堪能。
ヘビメタのライブ演奏と役者たちの歌もすばらしく、ヘビメタもよいかも~と思うこの頃。
「つまらん芝居は長い」 と自信を持って歌われるのが ごもっともな舞台でした。
コイヌが思わず買ったパンフレット。(3000円!)
LPレコードのジャケットの中に パンフが2冊と レコードに見える挿入歌がはいったDVDつき。
MY・PRO史上初、2回続けての観劇をしてしまったので 星3つ半 ☆☆☆+1/2
なぜ悲劇が好まれるのか☆タイタスアンドロニカス [Stage☆Review]
英国ロイヤルシェイクスピアカンパニーの「シェイクスピア・フェティバル」から正式招待されているという 蜷川幸雄演出の「タイタスアンドロニカス」を彩の国まで見にいってきました。
始まる前から ステージ上や通路やロビーで俳優たちが 発声練習やウォーミングアップして
いるうちに 白色のライトがビシッとステージを照らし 芝居がはじまる。
内容はローマを舞台に血を血で洗う復習劇。
人間味はあるものの 時に狂気になる 主人公タイタス(こどものためのシェイクスピアで
オセロを好演した吉田鋼太郎) が ゴート族の女王(麻美れい)の息子を残虐に殺したことから
悲劇がはじまる。 シェイクスピア劇ではおなじみ Villain(悪役)のムーア人(小栗旬)が
娘(真中瞳)をとてもひどい状況に貶めるところで 悲劇は最高潮になる。
白い衣装に赤い糸で流血を表し、おどろおどろしい舞台を
蜷川氏は美しいとまで言える形で表現する。
悪人がひどいことをすると なんとかしてほしい、という気持ちが 客席いっぱいに満ち溢れ~
観客も共に精神的りベンジに加担してゆく。
ラストには登場人物の大半が死んでしまう、という悲劇がなぜ好まれるのか?
たぶん自分の中の悲しみや哀れみそして残虐性がカミングアウトされるから?
最後に新しいローマ皇帝がきまり、 敵対あるいは蔑まれていた黒い赤ん坊を
白い子どもが抱取るシーンで ただの悲劇に終わらせなかったという「救い」をもって終幕。
重い舞台ではあるけど じわじわと色々なことを考えさせられる 実のある観劇となりました。
☆☆☆
はじめて落語~シェイクスピア [Stage☆Review]
今年は落語にゆこう!という目標のもとに
まずは古今亭志ん輔の「シェイクスピアを楽しむ会」にいってきました。
ハムレットを翻案した新作「黒白粉」(こくびゃくふん)。
そして古典落語の「富久」(とみきゅう)。
落語初心者ですから 何から何まで物めずらし。
最初に前座のお姉さんの高座から はじまり (しゃべりが止まりそう~がんばって~という感じ)古今亭朝太の「落語」、(これはソツなく うまいかも、しかし後の真打にはかなわない)
そしてお待ちかねの古今亭志ん輔(志ん朝の弟子)の高座。
さすが真打ち 前座からの流れで よどみない語り方と所作、そして芸の味わいの違いを
しっかと堪能することができました。
「枕」という 序奏の話からはいり 羽織を脱いだら 本題にはいってゆくというお約束。
志ん輔はこれまでにもシェイクスピアの落語を試みています。オセロとかロミオとジュリエット。
「シェイクスピア好き」を満足させるか 「落語好き」を満足させるかの加減が難しいとのこと。
ハムレットは次のようにまとめられました。
ハムレットは薬種問屋の「若旦那」、 悪い叔父のクローディアスは「我孫子のおじさん」
母ガートルードは 薬種問屋の「女将さん」 、オフィーリアは吉原の花魁「おはつ」、
そして友人ホレーシオは「熊さん」、と登場人物があい揃い はじまり~。
父殺害の疑惑をはらそうと 黒白粉(クロか白かはっきりする意味?告白もかけているのか?)
を調合して 若旦那が 酒にまぜて 皆に酒をふるまい。それぞれが自分の思いを
語りだす~という 筋立て。話のオチは有名なセリフ「to be,or not to be~」を
どう翻訳したか、ということで おしまい。
休憩をはさみ、夫婦漫才(太平遊平、かほり)のあとは 再び真打の出番。
古典の「富久」は酒のみの久蔵が とみくじにあたるが
火事で焼いてしまい~という筋立て。
あらかじめ 筋はおさらいしていったのですが おさらいをする必要はなく 分かりやすく
語られました。例えば久蔵の仕事は幇間 (ほうかん)という「たいこもち」ですが
「芸人」と説明されます。 また地名も適当に変えてあり、筋のどこの部分を膨らませるか などは
噺家の腕の見せ所のようです。勿論オチは従来の決まったものになります。
落語を聴きながら これはやはりライブが一番だとおもいました。
何人もの人物の 語り分けは 声色と共に 顔の向きで違うことがわかりますし、
手ぬぐいや 扇子などの小道具の使い方 や 酒をつぐ、飲むなどの動作の名人芸を
楽しみことができます。
古典はやはり語りつがれたものだけあり 芸の見せ所です。
それぞれの解釈があるので どう演出してゆくかを 色々な噺家の芸を比べるのも
一興かとも思います。
また今はすたれてゆく 江戸ことばを堪能することができます。
「焼きがまわる」とか「酒でしくじる」など ポンポンでてくる言葉が実に小気味よい。
落語~かなり面白いです。 ☆☆☆